不動産はできるだけ利益が出るように売却したいものですが、希望どおりの価格で売却できるわけではありません。
売却したのに損してしまった、そんなときは譲渡損失の繰越控除という特例が使えることも。
今回はこの特例がどのような場合に使えるのか、不動産売却後の買い替えがある場合と買い替えがない場合それぞれについて見ていきましょう。
不動産売却後に買い替えをする場合の譲渡損失の繰越控除とは
自宅を買い替えるときに利用できるのが、「マイホーム買い替えの場合の譲渡損失の損益通算および繰越控除の特例」です。
この特例を使うためには、いくつかの条件を満たす必要があります。
売却する物件の条件
●所有期間が5年を超える自宅であること
売却する年の1月1日の時点で所有時間が5年を超えている必要があります。
●敷地面積が500㎡以内の部分まで
坪に直すと約151坪です。
敷地面積が500㎡を超える部分の譲渡損失の金額は繰越控除の対象となりません。
●売主の合計所得金額が3,000万円以内であること
買い替える物件の条件
●旧住居を売却した前年の1月1日から翌年の12月31日までに取得した物件であること
●新住居を取得した年の翌年の12月31日までに入居するか入居見込みであること
●家屋の床面積は50㎡以上であること
●返済期間10年以上の住宅ローンを借りて取得した物件であること
なお、この特例は、住宅ローン減税制度と併用できる魅力的な制度になります。
住宅ローン減税制度とは、住宅ローン残高または住宅の取得対価のどちらか少ないほうの金額を最大10年間、所得税から控除できる制度になります。
両方の制度を利用することでより減税できるので、利用できるかチェックしておきましょう。
不動産売却後の買い替えなしでも譲渡損失の繰越控除が使える
不動産を買い替えなくても、譲渡損失の繰越控除は使えます。
これが、「特定居住用財産の譲渡損失の損益通算および繰越控除の特例」です。
この特例を使える条件は、買い替えをする場合の特例の条件とほとんど同じです。
売却する物件・所有者の条件
●所有期間が5年を超える自宅であること
●売主の合計所得金額が3,000万円以内であること
●売却する物件が、売却の前日に返却期間10年以上の残債があること
●自宅の売却価格が住宅ローンの残債を下回っている、または損失が出ていること
買い替えの場合の特例も、買い替えなしの場合の特例も特例の限度額は同じで、住宅ローンの残債から、売却価格を差し引いた額です。
住宅ローンの残債が2,000万円で売却価格が1,800万円なら、200万円が特例の対象の限度額となります。